日本のものづくり基盤の崩壊が始まっている
2011年12月9日、トヨタの小沢哲副社長は2012年3月期の業績見通し発表の記者会見で次のように話しました。「(タイ洪水による影響を受けて)ものづくりの基盤である電子部品は既に海外生産に依存しており、特定の部品については既に国内が空洞化しているという事実を目の当たりにした。円高により日本のものづくり基盤の崩壊が始まっている状況を垣間見ることになったことはショックだった」。
この発言に如実に表れているように、日本のものづくりを崩壊に向かわせる1ドル=70円台後半の円高が続いています。今回の円高の前は、1995年の79円75銭が戦後の最高値でしたから、昨今の水準を「超円高」と呼ぶ声もあります。これに対して、物価上昇を勘案した「実質実効レート」だとそれほどの円高でもないという反論もあります。確かに、95年以降の日本はデフレ、米国は普通にインフレでしたから、円の通貨価値は95年より高まり、ドルの通貨価値は下がって当然です。そういう意味で言えば、確かに昨今の円高は95年ほどではありません。
では、物価との比較でドル・円の為替レートを見てみましょう。OECD(経済協力開発機構)が毎年発表している購買力平価と実際の為替レートとを比較してみましょう。念のため購買力平価について簡単に説明しておきますと、国が異なっても同じ物の価格は一つであるという「一物一価の法則」をベースにしています。米国で1ドルのものは日本では何円しているか。これが購買力平価です。1ドル=79円台を記録した95年、OECDによれば購買力平価は1ドル=175円! 実に物価比較で妥当とされる水準の2倍以上の円高です。では、直近ではどうでしょうか。2010年、OECDによる購買力平価は1ドル=111円。先の話のとおり、確かに昨今の円高は95年に比べればそれほどではありません。しかしそれでも、物価比較で妥当とされる水準111円からすれば、かなりの円高であることに変わりはないと言えます。
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