長期金利(日本の国に10年ローンでお金を貸す時の金利)は、依然0.95%程度と極めて低い水準で安定しています。一見するところ、ここ数年と何の変化もないように見えます。
しかし、表に現れない水面下で大きな変化が起こっています。間違いなく、日本国債の危機は一気に進んでいます。
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一つは、貿易赤字(さらにその先にある経常赤字)です。
我が国は昨年31年ぶりに貿易赤字に陥ることが確実視されています。貿易赤字が更に膨らみ所得黒字を食ってしまいますと、我が国は経常赤字に陥ります。
経常赤字になるということは、政府と民間を合わせた国の経済の資金繰りが自国内でできなくなる(海外から借りざるを得なくなる)ことを意味します。そうなれば10年ローン0.95%でお金が借りられなくなるのは間違いない、金利上昇は必至でしょう。
ここのところの貿易赤字にはもちろん円高が大きく影響していますが、それ以上に原発停止に伴うエネルギー輸入の増加要因が大きいです。いい加減な週刊誌などではなく日本経済研究センターでも、「全原発停止なら2017年度にも経常赤字に」と予測しています。原発停止問題は実は国債消化問題にもつながっているのです。
いずれにしても、貿易収支、経常収支の状況が、1年前にはそれこそ想定外だった展開になっているのは間違いありません。
投稿情報: 稻田雅彦 | 2012年1 月13日 (金) 16:27
二点目。それでも我が国はまだ経常黒字ではあるのですが、震災後、その経常黒字(海外からの稼ぎ)を超えて、海外に資金が流出しているのです。
それは一部の方がイメージするような海外ファンド投資ではありません。M&A(合併・買収)です。円高メリットを活かそうというやつですね。これはもちろんこの円高下での企業行動としてはやむを得ないものなのですが、上でも述べた「政府と民間合わせた国の資金繰り」面では、芳しいことではありません。
よく国債消化に関して個人金融資産と言われますが、実は企業の貯蓄過剰も大きく寄与しているのです。ところが、その企業の資金が海外に流出していけば、「短期的には海外での稼ぎを上回るペースで海外投資が増え、国内で企業のカネ余りの度合いが小さくなるのは確かだ」(12/29日経)。
要は、国債に回っていた企業のお金が、海外に出ていくようになってきているということです。
投稿情報: 稻田雅彦 | 2012年1 月13日 (金) 16:30
三点目。ということは、国内の資金需給がひっ迫してきているわけですから、金利が上がっておかしくありません。にもかかわらず、国債金利が低位安定しているのは冒頭で述べたとおりです。なぜでしょうか?
海外投資家が買っているのです。12/21に財務省が発表したところによれば、昨年9月末時点における海外投資家の国債保有比率は1年前より30.7%も増えて76兆円。残高全体に占める割合は8.2%にも達しました(よく海外投資家の保有は5%と言われますが)。
なぜ海外投資家は日本国債を買ったのでしょうか?欧州債務問題から逃げてきたんですね。日本国債、目先は欧州のようなことにはなりませんから。
しかし、国内の資金は海外に出ていき、欧州債務問題から一時的に逃げてきたお金で賄われるようになってきているというのは、安定という観点からは好ましいとは言えません。
そういった事情を反映してか、CDS市場での日本国債の保証料率(保証料率なので信用が下がると料率は上がります)は、昨年末から顕著に上昇し始め、直近では中国より高くなっています(つまり国債の信用力は中国以下ということ)。
今の日本国債市場の安定は、欧州債務問題のお陰と言えるかもしれません。
投稿情報: 稻田雅彦 | 2012年1 月13日 (金) 16:34
なお、ここまで日本国債市場の変化、危機の進展について述べてきましたが、だからと言って、すぐ円の暴落とかハイパーインフレとか預金封鎖などという話では、全くありません。
貿易収支・経常収支・対外直接投資・海外投資家・CDS市場等々……。これらの動向をチェックしながら、冷静に多面的に国債市場を考えていけばいいでしょう。
再生日本21
執行役員 稻田雅彦
投稿情報: 稻田雅彦 | 2012年1 月13日 (金) 16:37