先週(7/1)、自分年金クラブ会員限定セミナーで
「国家破産基礎講座」と題して話しました。
そこで使った資料の中から、お勧めのレポートを2点ご紹介します。
国家破産に関心の深い方には、是非お読みいただきたいと思います。
A.『エコノミスト』2010.6.29号「国債暴落の“ウソ”」
からP36-37の
「デフォルト『財政危機=インフレ』とは限らない」
棚瀬順哉
特集のタイトル「国債暴落の“ウソ”」は
いかにも週刊誌的売らんかなのキャッチですが、
決して安易に「国債暴落などあり得ない」と書いているわけではありませんし、
当然国債暴落を煽る内容でもありません。
様々な角度から国債を巡る状況をきちんと解説してあり、
なかなか勉強になります。
とりわけ棚瀬氏のレポートは
90年代後半以降デフォルトした国家の事例を
きちんと調べ、
インフレになったのは通貨が急落した国で、
そういった国は外貨準備が少ないのに無理にドル・ペッグ(固定)していた
ということなどを、明解に説明してくれています。
(これは一般の書店ではもう売っていないと思いますので、
お近くの図書館でお読み下さい)
B.「政府債務累増の帰結-歴史的考察」
米山秀隆(富士通総研経済研究所)
下記PDF
http://jp.fujitsu.com/group/fri/downloads/report/research...
「歴史的考察」とあるとおり、政府債務が累増していった国がどうなったかを、
ナポレオン戦争後のイギリスから
90年代初めのスウェーデンまで説明、まとめた上で、
ラスト「日本への示唆」で締めくくっています。
各国の政府債務を巡る状況の違いも勉強になりますが、
特に秀逸なのが「日本への示唆」における日本の現状のとらえ方。
これは2003.3の論文ですから、慧眼と言うべきでしょう。
以下、部分抜粋します。
今のところ日本は経常黒字国・債権国であり、
また、国内には膨大な金融資産もあるため、
債務が累増したところでそれが通貨の信認低下を招き、
経済が危機的状態に向かう可能性はほとんどない。
しかし例えば、産業の競争力が急速に衰えている
日本の現状を考えると、
近い将来経常収支が赤字化する可能性は
ゼロではないだろう。(中略)
そういう意味では、
今の段階で円安への為替調整を進めることができれば、
それによる輸出増加、物価の上昇という
二つの効果を通じて、
日本の苦境を多少は和らげることができるかもしれない。
しかし、競争力が衰えたといっても、
依然、経常黒字国である円の調整が
今の段階で進む可能性は低い。
また、国際協調によって
円安誘導できるかどうかについても、
対ドル、対人民元との現在の関係を考えると
その可能性は低い。
おそらく、円安への調整が進むとしたら、
イタリアやスウェーデンのように
日本経済が危機に陥る時であろう。
再生日本21
執行役員 稻田雅彦
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