江戸の街にはありとあらゆるモノの「修理職人」がいた。
例えば茶碗が欠けたら焼継(やきつぎ)屋。焼き接ぎというのは、ガラスの粉を割れ目につけて、低温で焼いてくっ付けるという技術。
昔は割れモノは漆で接着していたが、焼接屋ができてから瀬戸物が売れなくなったほどだとか。
樽や桶が壊れたら箍(たが)屋に頼む。箍(たが)というのは桶の周囲の板を締める竹や金属でできた輪のことで、これが古くなると水漏れするようになる。それを新しく締め直すのが箍屋の仕事。
「タガが外れる」「タガが緩む」なんて言葉はここから来ているわけだ。
面白いのは提灯直し。これは破れた提灯紙を張り替えてくれるが、そのときに屋号なんかを書き込む。その提灯を持って歩けば宣伝にもなるって寸法だ。
他にも鍋や釜を直す鋳掛(いかけ)屋、下駄の修理屋、算盤の修理屋、錠前直しなど、日常使う道具のすべてに、それぞれの修理屋がいたといっていいほど。
これらの修理職人は、それぞれ独特の掛け声を発しながら、道具を持って町中を歩いていた。客から出向かなくても、待ってれば職人の方から来てくれる。
現代では出張サービスを頼むと割高になるが、江戸では出前が当たり前だったわけだ。
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