Wmodeでも、三橋貴明さんという方の論説について
どう考えるか、という話題が出ていました。
ネットに弱い私は
この方のことを知らなかったのですが、
「2チャンネル」やブログ出身の評論家として、
ここのところ
一気に売れてきている人だったんですね。
(自民党から参議院選挙にも出る予定だそうです)
で、ブログで浅井のことを
ボロクソ言っているということもあり、
彼の本を買って読み、講演会も聴きに行き、
質問もしてきました。
知らない方のために、簡単に紹介しておきますと、
わが国の財政問題に関しては、
政府債務は大した問題ではない
というスタンスの方です。
と言うより、
「政府の借金を問題視する人」を攻撃する方
と言った方がいいかもしれません。
本を読み、講演会を聴き、質問した
小生の感想を申し上げますと、
財政問題に関する論説に限って言えば、
「政府の借金を問題視する人」を攻撃するのに
逸るあまり、
逆方向に偏っているという感じを受けました。
Wmodeではスペースが小さいと思いましたので、
久々に「ネット松下村塾」の場を使い、
三橋氏の論説に欠けている点、問題点を指摘しつつ、
日本経済、財政の問題点を
考えていきたいと思います。
(1)中央銀行の国債買取と通貨発行に関して
三橋氏は、政府支出の拡大、国債増発、
それを中央銀行(日本では日銀)で買い取る
政策を主張します。
そして著書『高校生でもわかる日本経済のすごさ!』
の中でこのように言っています。
中央銀行の買い取りと聞くと、
経済に疎い人が顔を真っ赤にして、
「そんなことをしたら、日本はジンバブエや
第一次世界大戦後のドイツのように、
ハイパーインフレーションになる!」
などと主張したりします。
しかし、これは根本から誤りです。
現在のジンバブエや、かつてのドイツが、
物価が天文学的水準に跳ね上がる
ハイパーインフレーションに陥ったのは、
通貨発行が主因ではありません。
国内の供給能力が致命的に不足していたからこそ、
インフレが止まらなくなってしまったのです。
要するに、極度の物不足だったわけです。
例えば、第一次大戦後のドイツの場合、
そもそも戦争中からインフレが進行していました。
さらに戦争終結後、国内屈指の工業地帯であり、
地下資源も豊富なルール地方を、
フランス・ベルギー連合軍により
軍事占領されてしまいます。
インフレの状況下における極度の供給不足が災いし、
ドイツはパン1個買うのに
1兆マルクが必要になるという、
途轍もないインフレーションに突入したのです。
彼のこの論説は正しいか、正しくないか。
半分は正しいが、半分は正しくありません。
正しいのは、
ハイパーインフレが起こったそもそもの契機は
極度の物不足にあったという点です。
ですから、小生も
第一次大戦後のドイツや第二次大戦後の日本と
現在の日本とを同列に論じることはできない
と考えています。
しかし、
「では、物価が1兆倍になった
第一次大戦後のドイツでは、
銀行券流通量は何倍になっていたか?」
と言いますと、やはり1兆倍なのです。
つまり、当時のドイツのハイパーインフレは、
極度の物不足から起こったのは事実ですが、
それだけで天文学的ハイパーインフレに
なったわけではなく、
野放図な金融政策=通貨発行との合わせ技で
引き起こされたというのが正しい姿です。
それが証拠に、
1923年11月からハイパーインフレは
ピタッと収まるのですが、
それは下記のような理由によります。
ハイパーインフレーション終焉のきっかけは、
1923年10月15日に
1レンテンマルク=1兆マルクとするデノミを含む
通貨改革が断行されたこととされている。
ただし、デノミそれ自体は
ハイパーインフレーション終焉のために重要ではない。
むしろ、旧ライヒスバンクの銀行券発行機能が
新設されたレンテンバンクに引き継がれた際に、
レンテンバンクの発行限度が320億マルク、
政府信用限度が120億マルクとされたことが
ハイパーインフレーション収束の原因として
重要である。
これを受けて、ドイツ政府は支出の100%を
通貨発行でファイナンスしていた財政政策を転換し、
10月27日には政府雇用者数の25%削減、
臨時雇用者の解雇、65歳以上の退職が強制された
(『財政赤字とインフレーション』
藤木裕・日本銀行金融研究所)。
つまり、100%通貨発行に頼っていたがために
ハイパーインフレとなり、
それをやめ真っ当な財政健全化策を
打ち出したことで、
ハイパーインフレは収束したわけです
(需給面にも言及しておかないと
バランスを欠きますので、
そちらにも触れておきますが、
ハイパーインフレ収束には、
ルール地帯のゼネスト中止、生産回復という
需給面の要因もあります)。
確かに今の日本でハイパーインフレの危機という
のは、極めて考えにくいでしょう。
しかし、上記でもお分かりのとおり、
中央銀行の国債買い取り、さらに引き受けには、
財政への信頼を低下させ悪性インフレに
つながるという危険性があるという認識は、
持っておくべきでしょう。
再生日本21
執行役員 稻田雅彦
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